今や安倍くんの頭の中は、60年安保時、祖父岸信介と共に自宅に籠城した記憶(確か自著にそう書かれていた)がよみがえり、かなりの高揚感に満ちていることでしょう。
彼は、今の日本の繁栄(かどうかは置いておいて)は、国会を包囲されるほどの反対を押し切ってまで安保改定を成し遂げた祖父のおかげだと思い込んでいます。
成立過程も、岸信介にならって、強行採決→60日ルールによる再可決(60年安保は自然成立)の道、決定のようです。
小林節さんも同じように考えられているようです。
この小林節さんという方、例の、安保法制の一連の流れの中、潮目を変えたと言われている6月4日の憲法審査会で発言されていた方です。メディアの扱いは、自民党推薦でありながら安保法制を明確に違憲と答えられた長谷部恭男さん中心でしたが、私はなぜか小林節さんが気になり、その後著書を2冊ほど読んでみました。
何がひっかかったんでしょうね。
ひと月以上前ですのではっきりは覚えていませんが、何だか不思議な感じを受けたんですね。憲法学者でありながら、妙に世俗的な受け答えをされていたような、憲法学者が浮世離れしているというわけでもありませんが、言うなれば、佐高信(リンク先にいきなりビートたけし!)さんのような現実を超越したような孤高さを感じたんですね。
佐高さんの名をあげていることをご本人が喜ばれるかどうかは分かりませんが、私としては好意を持って言っているつもりです。
で、「白熱講義!集団的自衛権」です。
いやー、実に明解な方ですね。それに、熱い感じがします。安倍政権に対して相当怒っています。
これはひどい。憲法があまりに粗末にされている、軽んじられている。憲法が可哀想で仕方がない。
この本は、安倍政権が昨年の7月1日に集団的自衛権容認の法制化を閣議決定したことをうけて書かれていますので、この一文は、安保法制懇の報告書に「憲法9条は、自衛隊や集団安全保障について言及していない。」と明記されていることへの怒りの言葉です。
小林さんの基本的な考え方は、
- 憲法は国家権力を縛るものであり、主権者たる国民が為政者を管理するマニュアルであるとの「立憲主義」にたつ。
- 主権国家は国際法上、当然の権利として個別的、集団的自衛権を保有している。ただし、その行使は憲法や国内法の制約を受ける。
- 現行憲法は、専守防衛のための武力行使は認めているが、集団的自衛権は認めていない
と明解であり、集団的自衛権の行使が必要であれば、堂々と憲法9条の改正を国民に問えばよいということになります。
基本は、筋の通っていないことへの怒り、安倍くんの姑息さへの怒りですね。上の「日刊ゲンダイ」の記事にもありますが、この本の中でも「憲法無視の政権は選挙で倒せ!」と書いています。
ただ、小林さんはもともと改憲派であり、「憲法9条は空想的平和主義だ」と批判されてきているようです。
現行憲法の価値を認めた上で、それをより良くするために改正する。この世界の憲法学の常識が、日本では全く通用しなかった。
と嘆かれています。
もうひとつ、自民党が2012年に発表した「日本国憲法改正草案」にも
その中身は私を落胆させ、やがては怒りを呼ぶものであった。
そもそも、その草案は「憲法とは何か」を全く理解してないものだった。たとえば、草案102条では「すべての国民は、この憲法を尊重しなければならない」としているが、憲法とは主権者の「国民」が「政治家等の公務員」に権力を託す際に課す規範だということを失念している。
と「立憲主義」の立場からはっきりと批判されています。
ところで、件の6月4日の衆議院憲法審査会ですが、動画がありましたので見てみましたら、面白いですね。2時間半と結構長いのですが、長谷部恭男 早稲田大学法学学術院教授、小林節 慶應義塾大学名誉教授、笹田栄司 早稲田大学政治経済学術院教授の講義が受けられます(笑)。
それに、小林さん、この中の2時間7分あたりのところで、集団的自衛権における軍事の一体化についての説明に、隣の長谷部さんと二人で強盗に入ったたとえ話をしています。このたとえ話の良し悪しは置いておいて、話を聞く長谷部さんの顔色一つ変えない様子に笑いがこみ上げてきます。
衆議院インターネット審議中継にもありますし、Youtubeにも。
ちなみに、上のサムネイルの小林節さんの後ろに座っているのは、明治天皇の玄孫でうっている竹田恒泰さんです。あれっと思ってググりましたら、小林さんの教え子で付添人としてついて行ったようです。「そこまで言って委員会」で相変わらず騒いでいます。
ところで、これらの動画の引用は違法なのかな?