数ページでいきなり挫折したのは、初版の発行が2012年4月ですから、ちょうど4年前なんでしょう。たまたま読んだ「森は知っている」が結構面白かったために、再度挑戦し、読み終えました。
でも、やっぱり書き出しは、とても興味をそそられるものではありませんでした(笑)。
ただ読み終えてしまえば、やっぱり吉田修一さんの書くものはどこまでいっても青春物語だなあと思います。
たとえ、産業スパイの話であっても、それも胸に爆弾を仕込まれた、刹那に生きるしかない存在であっても、冷酷に生きることは出来なく、人を思い、決して人を見捨てることは出来ないのです。
青春とは、見方を変えれば、友人であれ、恋人であれ、たまたま出会ったその場限りの人であっても、決して見捨てたりは出来ない精神状態のことかも知れません。
「森は知っている」でも書きましたが、これ、スパイものとしては全然ダメでしょう(笑)。否定的な意味ではないのですが、泥臭く、洗練されていませんし、話に緻密さがありません。
でも、読み進んでいけばいくほど、次が読みたくなり、止まらなくなります。
ストーリーではなく、人物設定がうまいんですよ、多分。
鷹野一彦にしても、AYAKOにしても、デイビッド・キム、青木優にしても、語られる設定は特異でも、描かれる人物像は皆心優しくいいやつで、それでいて皆ダサい奴らばかりです(笑)。
それに、映画「悪人」のレビューでも書きましたが、吉田修一さんに悪人は書けません。どう悪く書いても皆いいやつになってしまうようです。