2,3ヶ月前に「日本会議」について読んでみようと、図書館に3冊ほど予約しておいた最後の本です。
菅野完著『日本会議の研究』 を読んで、もうこれでいいかなと思ったのですが、1冊読むなら、絶対こちら(青木理著)ですね。
「日本会議」の分析結果はほぼ同じですが、裏付けのデータ量がまるで違います。菅野完氏の場合は、取材データがあまり記載されていなかったのですが、青木理氏のこの本は、当事者へのインタビューも豊富ですし、ジャーナリストとしての矜持を感じさせます。
簡単にまとめておきますと、
日本会議の実相
日本会議の源流は、新興宗教団体「生長の家」にあり、言い換えれば、
生長の家に出自を持つ者たちによる政治活動が日本会議へとつらなる戦後の日本の右派運動の源流になった。
ということになります。
全共闘時代の左派運動に危機感を持った若き生長の家の信者たちが、その後の生長の家本体の路線変更にもかかわらず、創始者谷口雅春の教えを熱心に信奉し、右派の政治活動と組織づくりに全精力を傾け続けてきた結果でもあり、その意味では、全共闘運動が生み出した、時代の双生児とも言えるのではないでしょうか。
谷口雅春の教えというのは、
ごく普通に見れば極右的で超復古主義的としか言いようのない政治思想であり、時にエスノセントリズム=自民族中心主義に陥りかねない危険なもの
であり、その根っこには宗教心があるようです。
幼いころから植えつけられた「宗教心」は容易に揺るがず、容易に変わることがない。変えることもできない。
だから強い。だから曲がらない。だからしつこい。(略)同時にその運動の根底には抜きがたいほどのカルト性が内包されて
います。
神社本庁と日本会議
日本会議を支える組織としては、まず第一義的に神社本庁があり、
それ(日本会議の活動)を動員面、資金面、そして影響力などの面で強力に支えているのが神社本庁を頂点とする神社界であり、これにいくつもの新興宗教団体による側面支援も加わっている。
わけで、
日本会議とは、表面的な“顔”としては右派系の著名文化人、財界人、学者らを押し立ててはいるものの、実態は「宗教右派団体」に近い政治集団と断ずるべきなのだろう。
そこに通奏低音のように流れているのは戦前体制-すなわち天皇中心の国家体制への回帰願望である。
ということからすると、日本会議が最も重要と思っていることは、
1,天皇、皇室、天皇制の護持とその崇敬
2,現行憲法とそれに象徴される戦後体制の打破
3,「愛国的」な教育の推進
4,「伝統的」な家族観の固守
5,「自虐的」な歴史観の否定
の5点に集約されます。
日本会議と安倍政権
問題は、やはり安倍政権との親和性です。
安倍首相は、日本会議のフロント組織である「美しい日本の憲法をつくる国民の会」にビデオメッセージを寄せています。
安倍晋三(ビデオメッセージ)「今こそ憲法改正を!武道館一万人大会」主催 美しい日本の憲法をつくる国民の会 日本武道館於 平成27年11月10日
また、憲法改正について言えば、国民投票を見据えて、相当地方にも浸透しているようです。
何がどこでどうなったのかははっきりしませんが、こうした動きに社会の抵抗感が薄らいてきています。
2018年が明治維新150年にあたるという話がでていますが、それでふと思うのは、明治維新から太平洋戦争まで73年、太平洋戦争敗戦から現在まで70年、だから何というわけではありませんが、もうすでに何が起きるかわからない時代に入っているということかもしれません。