挫折しそうになっていた『シンセミア』、結局読み切りました。
ただ、結構ずるをしていますので、本当のところを読み切れていないかもしれません。
まあ、性もないと読んだ本を良かったと思えるわけはないのですが、それでもやっぱり、この本を良かったと思う人そう多くないでしょう。あとがきに池上冬樹が解説を書いていますが、冒頭を引用しますと、
いやはや面白い。ほぼ十年ぶりに読み返したけれど、あきれるくらいに安っぽく、俗悪で、馬鹿馬鹿しい物語に昂揚をおぼえ、物語にひきこまれてしまった。
らしいです。
本当にこの通りで、「あきれるくらいに安っぽく、俗悪で、馬鹿馬鹿しい」んです。
だって、1,600枚でしたっけ、それだけの枚数を書いてきて、何と物語を構成してきた人物のほぼ半数が死んでしまうんですよ。
人が死ぬことで物語を解決してしまうってのはアカンでしょう。
というふうに考えれば、著者が書きたかったのは、因果応報的なオチではなく、それまでの、何とも「安っぽく、俗悪で、馬鹿馬鹿しい」人間の営みということになります。
たしかに人間の執着心ってのは愚かさの源だとは思いますし、個々の人間の見ていることってのは物事のほんの一面だということではあります。
それにしても、これだけの長編が読む者の心に何も残さないというのは珍しい、ということです。