この本を読んで一番疑問に思うことは、本当にこういう文体の本が売れるのだろうか?ということと、出版側は本当に売れると思っているのだろうか?ということです。
こういう文体を何ていうんでしょうね? 口語体で、なおかつブログ風?
いくつか拾ってみますと、
なんだそりゃ
ものすごく、かっこいい
ふざけるな
ディスる
こんな感じの単語が連発されます。
そうした言葉で伝わることは、そうしたレベルのものでしかないでしょう。
『アナキズム入門』とありますが、この本を読んで「アナキズム」をもっと知りたいと思う人はそう多くはないでしょう。もしそうだとすれば、入門書としては失格と言わざるを得ません。
内容は、プルードン、バクーニン、クロポトキン、ルクリュ、マフノ、5人の著名(?)アナキストにそれぞれ一章を当てて、その生涯を武勇伝的に書いています。
それはそれでいろいろな視点があっていいわけですので一概に否定するものではありませんが、本当に「入門」という点にポイントを置くのであれば、われわれが現実に抱える問題や日常的生活感から書き起こすべきで、そうした問題をアナキズムから見ればどうなるのかといったことからのほうが入門にふさわしいと思います。
まあ、過去の偉人(?)の生涯から興味をもつことも多いとは思いますが、その場合でも、たとえばマルクスについて読んでいてバクーニンに興味を持つとかのケースのほうが多いわけで、こう何人も同じパターンで並べられても飽きるだけです。
本というのは、それが思想書であれ、小説であれ、読み進めば進むほど、知の深淵(?)へ導いてくれることにこそ意味があり、読みがいがあるものです。
この人、スゴイんだよ! スゴイんだよ!では、かえって引くだけです。
これ、かなり、「ディスって」いますね(笑)。
まあとにかく、そうした内容も内容ですが、思うに、そもそも「アナキズム」の書名に興味を持って手にする人は、ルクリュやマフノはともかく、プルードン、バクーニン、クロポトキンあたりは知っているでしょう。
ということで、アナキズムってなんだろうと思った方が最初に読む本としてこれを勧めることはできませんし、これを読めばかえって遠ざける可能性もあるのではと心配します。