「陸自が情報リーク」の見方 「これではクーデターだ!」 日報問題で文民統制に深刻な懸念(1/2ページ) – 産経ニュース
あえて産経を引用しましたが、この陸自の日報隠蔽問題、かなり問題が複雑化してきました。単純に稲田防衛大臣を辞めさせればいいということではなくなっています。
つまり、産経は安倍政権擁護の立場で書いていますのでそのままそうだそうだとはならないのですが、自衛隊の制服組が隠蔽情報をリークし、文民である防衛大臣の首を取ったとなれば、その点だけを取り上げれば確かにクーデターであり、戦前の軍部の暴走を想起しなくもないとも言えます。
ただ問題は、防衛省の場合、他の省庁が政務三役以外はピラミッド型の官僚組織であるのとは異なり、ピラミッド型の組織がふたつあるということです。実力組織である制服組と官僚組織である背広組です。
で、今回の場合、おそらく稲田大臣はそのどちらの組織からも信頼されておらず浮いているでしょう。官邸は、もちろん安倍首相が直接どうこうは分かりませんので漠然とした権力中枢という意味ですが、こちらもおそらく直接官僚組織をコントロールしようとし、またしているでしょう。文科省と同じことです。
誰がどう決めたのか、あるいは忖度であったのかは分かりませんが、この陸自の隠蔽は、官邸と背広組のやり取りの中で決定され、稲田大臣は蚊帳の外であり、おそらく会議の席で黒江事務次官が報告することは官邸が了解済みであることを稲田大臣も分かっている状態が状態化していたのだと思います。
ですので、すでに思考停止になっている稲田大臣は、黒江事務次官から「陸自の中にも日報が存在していますが、これは公開すべき公文書にあたりません」と報告されたことの意味自体を理解していなかったでしょう。
問題を整理しますと、シビリアンコントロールというものがいかに危ういものかということです。
実力組織の暴走は、決して制服組だけに危険があるのではなく、文民であっても、つまり今回の場合官邸が直接コントロールするこのも可能であり、現在のように権力が集中された状態になれば、直接自衛隊を動かすことも可能だということです。
シビリアンコントロールを機能させるためには、権力を分散させること以外にはなく、ますますそれが難しくなってきていることを実感させる事件です。
で、この産経の記事、いくつか問題点を指摘しますと、まず、稲田大臣のシビリアンコントロールの視点から書いていますが、そもそも大臣のシビリアンコントロールを剥奪したのは官邸でしょう。
そして、今回の場合、仮に制服組からリークされた(多分そうでしょうが)としても、大臣の首を取ろうとしたクーデターなどではなく、いわゆる内部告発でしょう。
防衛省内では「特別防衛監察の結果、一方的に悪者にされてしまうと反発した陸自サイドが情報をリークしている」(幹部)との見方が大勢を占める。真実がどちらであっても、結果的に政府の信頼が損なわれるのは間違いなく、「これではクーデターではないか」(政府関係者)との声すら漏れる。
この部分を読んでも、産経の立場が明確に出ていて面白いですね。
「真実がどちらであっても、結果的に政府の信頼が損なわれるのは間違いなく」って、産経の目的は政府を守ることであって、真実が何かに迫ろうとする努力もしないということです。
陸自で見つかったデータが公開されなかったからといって、国民が情報公開上の「実害」を被ったわけではない。
は? メディアの名前に値しないですね。
日報問題の展開に、防衛省内では苦悩も広がる。ある陸自幹部は「組織内で傷つけあっても誰一人、得をしない。国民の信用を失い、周辺諸国を喜ばせるだけだ」と嘆く。
これに至っては、安倍政権の広報新聞丸出しの内容です。