とても新鮮な感じで読んだ。主人公知寿のつぶやきのような文体が、村上春樹の説明過剰なワンパターン小説を読み続けている私には、すうーと心が晴れるように感じられた。
村上春樹など典型的だが、男の書く「女性」は、男の願望のような存在が多く、男の私でさえ、ちょっと違うんじゃないのと思うことが多いのだが、この小説の知寿と吟子さんは、男から見た女性でもなく、男から見られる女性でもない、知寿と吟子、二人の人間そのものがそこにいる感じがする。
こういう作品が「芥川賞」をとる、それでいいのだと私は思う。
芥川賞はなぜ村上春樹に与えられなかったか – 沈黙する言葉(旧)
「芥川賞はなぜ村上春樹に与えられなかったのか」(市川真人)の分析は間違っている。と言うより、商業的批評過ぎる。村上春樹が芥川賞をとれなかったことを、「アメリカ」や「父」などという視点で語るのは、穿ちすぎている。問題はもっと単純だと思う。村上春樹の作品は、芥川賞にふさわしくなかったのだ。