「苦役列車」に続いて読んだ。
2、3週間前に図書館に予約し、その時は「在庫」となっており直ぐに借りられたのだが、今見ると予約が16件も入っている。私と同じ、芥川賞効果なのだろうか。
西村氏の藤澤清造への傾倒ぶりは相当なもののようで、これを読むとよく分かる。全てがその話だ。
2005年頃に発表された3編「墓前生活」「どうで死ぬ身の一踊り」「一夜」が1冊にまとめられているが、ほとんど続きものと言ってもいいくらい、時間的にも連続している。「藤澤清造」の菩提寺(能登七尾)を初めて訪れた話、古い墓標をもらう話、自ら「清造忌」を主宰する話、藤澤清造全集発刊のための校正の話など、全て西村氏自身の話である。
正直なところ、それらの話にはあまり興味は持てなく、その間に語られる一緒に暮らす女性とのやりとりなどがとても面白い。全てが実話なのかどうかは分からないが、もしそうなら、この女性の方は大変だろう。というより、大変だっただろう。すでに彼の元を去ったとある。
今のところ、新刊でなければ、さらに読んでみようとの気は起きてこない。文体は軽快で、会話体も面白いのだが、それ以上のものが、私には感じられなかった。「平成の私小説」と言った売り方がされており、これが「私小説」であるかどうかは、私には微妙だが、ともかく、「私小説」であれば、その「私」の部分に共感できないと、なかなか読めないと言うことか。