映画「乱暴と待機」が結構面白く、小説版を読んでみました。
映画より、小説版のほうが私好みです。
細かい違いは、ウィキペディアに詳しいのですが、一番のポイントは、映画はややコメディタッチということでしょうか。確かに小説版でも笑えるところはあるのですが、どちらかというとブラック感が強いです。
それにしても、映画を見てから原作を読む場合の常ですが、映像の持つ力というか、ある種映像の持つ根源的な傲慢さ(?)みたいなものを思い知らされます。どんなに浅野忠信や小池栄子の顔を消そうとしても、読む端から、ちらちら、ちらちらするんですよね。勘弁してほしいです(笑)。セリフ部分を読んでいても、あの浅野忠信のわざとらしい台詞回しが耳から離れないんです。
まあ、それはともかく、映画は、コメディ要素を加味した分、原作の持つ重要な点を置き去りにしているような気がします。特に山根英則(浅野忠信)の異様さが茶化されていることで、存在そのものが随分軽くなっていますし、その異様さへの畏怖の念が、番上(山田孝之)の奈々瀬(美波)への執拗さにつながっていることも捨て去られています。
映画もそれはそれとして、そこそこ面白かったからいいのかもしれませんが、原作のトーンを持った映画を見てみたいですね。ああ、というより、そもそも舞台が先にあって小説のようですから、舞台を見たほうがいいってことですね。言うなれば、小説版も戯曲のト書きを極端に詳しく書いたような感じですので、そもそもの原点は舞台(芝居)ということでしょう。
いずれにしても、本谷有希子の感覚と価値観とかはとても面白いです。もっといろいろ読んでみましょう。