僕たちは戦後史を知らない――日本の「敗戦」は4回繰り返された
- 作者: 佐藤健志
- 出版社/メーカー: 祥伝社
- 発売日: 2013/12/04
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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この本、たまたま図書館で手にとったんですが、びっくりしました。日本の戦後に対する論点が、しばらく前に読んだ白井聡著「永続敗戦論」とかなり近い、というかパクリ?と思うくらい似ているんです。
下のリンクが「永続敗戦論」を読んだ時の記事なんですが、白井さんは、日本の戦後とは、戦前の国体思想の「天皇」を「アメリカ」にすげ替え、「敗戦」を「終戦」と言い換えてきた「否認」の歴史だと言っています。
で、この佐藤健志さんは、白井聡さんとほぼ同じ戦後認識を持っているようで、それを「ファンタジーの戦後史」として1940年代から80年代にわたって分析しようと試みています。
上にパクリ?などと書いてしまいましたが、さらに偶然、今読んでいる「日本戦後史論/内田樹×白井聡」に白井さんが佐藤健志さんのことに触れているくだりがあり、白井さんも自分と同じような考え方をする方がいると驚いています。
佐藤健志さんは、1966年生まれとのことですから現在49歳位で、プロフィールに、1989年戯曲『ブロークン・ジャパニーズ』で文化庁舞台芸術創作奨励特別賞を受賞とありますので、演劇畑の方なんでしょうか。確かに、この本の中にも演劇や映画関係の引用が多いです。
オフィシャルサイトを見てみますと、かなりビシっと作られています。
佐藤健志 official site ”Dancing Writer” | 作家 佐藤健志オフィシャルサイト
で、この「僕たちは戦後史を知らない」ですが、ターゲットが絞られていない感じで、全体がぼんやりしています。下のリンクで電子ブックの立ち読みができます。
特別「戦後」について知りたいと思っているわけでもない者が、このまえがきを読んだら、多分そこで手にした本をおいてしまうでしょう。やや押し付けがましさが表に出すぎている感じがします。戦後認識(歴史認識)についての自説を広く知らせたいとか啓蒙的な意識を全面に出したほうが読みやすくなるかと思います。
逆に、日本の「戦後」とは?などと疑問を持ったり、白井さんの「永続敗戦論」を読んでいる者からすると、日本の戦後はファンタジーであったの繰り返しでいつまでも前に進まない感じがします。
「ファンタジーの戦後史」という視点ももうひとつはっきりしません。おおよそ「敗戦」を認めない「戦後」ということだとは思いますが、その論点を深めようと論考を試みながら、結果が「世相を斬る」的に表層を撫でていくだけになっている印象です。
批判的な言葉が多くなってしまいましたが、何かもう一冊は読んでみようと思っています。