ニュースサイトを見ていましたら、こんな記事がありました。
引用されている写真は内容とは直接関係のないアイキャッチの資料画像で、まあこういう写真で釣られるんですね(笑)。
記事の要点は、アデル・ラボさん(16)という女性が、#LesPrincessesOntDesPoils(お嬢様には毛がおあり)のハッシュタグで、ムダ毛(この言葉自体も?)処理をしない脇や足の写真をツイッターに投稿して、賞賛もあるが、非難の的にもなっているという内容です。
で、今わざわざ書こうとしているのは、そのことについてではなく、「え?フランス人って、いちいち、こんなことに反応するの?」という、フランス人=個人主義という思い込みからくる驚きの話です。
今『シャルリとは誰か?』という本を読んでいます。
一年半前ですね。シャルリー・エブド襲撃事件発生が昨年の1月7日、オランド大統領やメルケル首相やキャメロン首相たちヨーロッパ各国の首脳がスクラムを組んでデモ行進したのが1月11日、そしてこの本がフランスで発売されたのが5月(多分)です。
この本と毛をそるそらないの話に直接の関係はありませんが、何となくのフランスつながりと、こういうネタに「『気持ち悪い』とけなしたり、こうした写真を投稿した人を『急進的フェミニスト』などと揶揄(やゆ)したりする(AFPの記事)」のは、この本にいう「ゾンビ・カトリック」の人たちなのかなあと思ったわけです。
「ゾンビ・カトリック」というのは、著者エマニュエル・トッドさんによりますと、伝統的にカトリックの影響が遅くまで残った地域では、脱宗教化が進んでいるようにみえても、代々続く権威主義的な家族、兄弟関係により、今でもカトリック的価値観のもとにある層のことを言います。
地域的にはフランス周縁部に多く、パリなど中心部からすれば後進的ですが、第二次大戦後に富裕化し、移民の流入により低学歴化した中心部に比して、相対的に高学歴化しているそうです。
彼らは、自由、平等、友愛の共和国精神を標榜しますが、無意識では、カトリック的権威、不平等、差別主義を内在しており、著者は「ネオ共和主義」と呼び、この層が「私はシャルリ」の実態だといいます。
なるほど。
この本の中にも出てくる「ヴィシー政権」のことを考えれば、フランスという国に内在している権威主義的、全体主義的傾向というのも、ある意味納得できるものですし、どの国、どの地域にもある二面性という言い方もできるかもしれません。
この本が出版された時、著者はかなりのバッシングを受けたらしく、時の首相(現在も)マニュエル・ヴァルス氏がル・モンド誌の一面で「いや、1月11日のフランスは欺瞞ではない」と反論したそうです。
その中で「悲観主義」「トッド氏の理論はもっとも危惧すべきもの」と批判されたエマニュエル・トッド氏は、「マニュエル・ヴァルスの楽観主義はペタン元帥の国家革命の楽観主義と同じ(フランスニュースダイジェスト)」と切り返したようです。
まだ、読みきれていませんが、その「ゾンビ・カトリック」は、宗教的代替物としてユーロという単一(通貨)性を求めるという論説もあり、さらに『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる』という著書もあるようで、「EU =静かなる帝国主義」ではないかと考える私としては、かなり興味深く感じるものがあります。
「ドイツ帝国」が世界を破滅させる 日本人への警告 (文春新書)
- 作者: エマニュエル・トッド,堀茂樹
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2015/05/20
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