下の引用 「シン・ゴジラ」の記事で紹介している辻田真佐憲さん、興味を持ち、二冊読んでみました(います)。
『ふしぎな君が代』と『たのしいプロパガンダ』です。
『たのしいプロパガンダ』の方はまだ読了していませんので、『ふしぎな君が代』について少し書き残しておこうと思います。
で、その前に、辻田真佐憲さんが言っている「大衆文化のプロパガンダ作用」に関して考えさせられる、「シン・ゴジラ」についての記事がありました。
【新聞に喝!】「シン・ゴジラ」がメディアに再認識させた日本人ならではのパワー 大阪大学教授・星野俊也(1/3ページ) – 産経ニュース
リンクは近いうちに切れるでしょう。星野俊也さんという大阪大学教授の投稿ですが、それにしても産経らしい記事です。
プロパガンダに乗っかった(ふりをした)そのまんまの内容で、
日本人ならではのパワーについて、現代日本人に「気づき」をもたらす要素が凝縮されていたように思う。
劇場に3回足を運び、ディテールに目がいけばいくほど涙腺が緩む自分に照れながらも、登場人物のセリフにはぐっと来るものがあった。そう、「この国は、まだまだやれる」のだ。
なんて書いていました。
この方、辻田さんが言う「願望(虚構)」が現前してウルウルしてしまったようです。この方、大学教授なんですがね。
ふしぎな君が代
で、この本です。
よくもまあこれだけ突っ込んで様々な資料をあたったものだと驚かされます。ネットには(軍歌)オタクとの評価もありますので、その関連で「君が代」に入りこんだのかもしれません。
内容は「君が代」が、
- なぜこの歌詞になったのか?
- 誰が作曲したのか?
- いつ国歌となったのか?
- 一般大衆にどのように浸透したのか?
を古今和歌集にまで遡って探求し、最後は「なぜ君が代は論争の的になるのか?」で締めています。
この最後の問いに対する答えは簡単で、未だこの国では、第二次大戦、太平洋戦争の総括ができていないからです。これは辻田さんが言っているのではなく私の答です。
さらに言えば、「君が代」や「日の丸」というツール(怒られそう)を使って、戦前の「国体」思想を復活浸透させようとする勢力がいるということです。そして、なぜかは分かりませんが、皆それと知りつつ、抵抗することなく、受け入れていくんだなあということです。
今はそうしたことに対する圧力が無茶苦茶強いですからね。
オリンピックの壮行会でしたか、森委員長?とやらが、何か言っていました。脅しですよね。「君が代」歌わない奴には金は出さん!(と言ったわけではないが…)って。あんたの金じゃないって!
話を戻して、辻田さんは最後に君が代についての提言をしています。
提言は、六項目にわたっており、君が代の有り様については、基本、現状追認なんですが、
- 「君が代」斉唱については、マイノリティに配慮して強制は避けるべき
としているのは、ああそうだなと納得がいきます。つまり、
「君が代」には、複雑な歴史があるのだから、これに抵抗感を覚えるマイノリティへの配慮は欠かせない。(略)教職員のみならず児童生徒にまで強制的に歌わせたり、尊重しないものには「国籍を返上せよ」と迫ったりするが如きは少なくとも論外である。
ということです。マイノリティ?とは思いますが、そういう発想で「自由」が確保されるのであればそれもありかなと思います。
さらに、「歌う国歌」から「聴く国歌」へ変えることも提案しています。
これも基本的には同意できることです。
私も「君が代」を国歌として歌いはしませんが、カッコよければ流すことに抵抗感はありません。例えば、リオの閉会式で流れたブルガリアンボイスっぽい合唱付きアレンジは、カッコいいと思います。
ただ、もう早速、この君が代だけではないのですが、ショーに対しても「海外から絶賛」だのと、「ほめてよシンドローム」症状が蔓延しているのにはうんざりです。
「ほめてよシンドローム」と書いて、そう言えばと思い出しましたが、辻田さんがこの本の中に書いています。
明治、大正、昭和時代の日本人も、盛んに日本が海外からどう見られているのか気にしたようで、君が代にしても、国歌としてどう見られているんだろうと海外からの評価についての雑誌記事があったようです。
英国人は「君が代」を「恰も天界の楽譜のごとく」聴いているだの、ついにひとりの英国紳士が大金を払うから「君が代」を譲り受けたいと申し出ただのという記事(「音楽界」1912年8月号)
これだけではなく、ニューヨーク音楽芸術研究所所長だの、一体誰なのというような人達の名前がズラリ並んで、「尊厳」「非凡」「優美」などの美辞麗句が並んでいます。挙句の果てに、「君が代はベートーベンやモーツァルトの曲に比して決して遜色ない」とまで言ったという人の引用まであったようです。
「ほめてよシンドローム」は日本人のアイデンティティーということのようです。