ときどき新聞のコラムなどで見かける浜矩子さん、反安倍(アベノミクス)が明確で気持ちのいい方なんですが、経済予測はほとんど当たらないことでも有名な方です(笑)。
ただ、経済予測なんてどっちにしたって五分五分なんですし、そんなものが必要な人は経営者か投資家ぐらいですから、そういう人が表に出てくる予測なんて読んじゃいません。
そもそも御用学者じゃあるまいし、学者が権力に批判的であることは誇るべきことで、常に警鐘を鳴らしてこそ意味があります。
で、この本は、毎日新聞の連載「危機の真相」をもとに単行本化されたもので、まとめられているのは、2015年11月から2016年8月とありますので1年半くらい前から半年前くらいまでの内容ということになります。
こんなことが書かれています。
日本の危機
アベノミクスの問題点
- 何が何でも成長の一点張り
経済大国の日本がさらにGDPを大きくする必要があるのか - 富の偏在を是正するというテーマに向き合おうとしない
すでに十分豊かな国で貧しくなる人がいるとすれば、それは豊かさを分かち合えていないということ
黒田日銀の政策の誤り
- 国債大量購入という金貸し業者化
- EFTによる大量株式保有
資金循環過剰
日本経済の状態を示すものに「資金循環勘定」というものがあり、GDP統計や国際収支統計とともに重要な統計だということです。家計、企業、政府、海外の四部門の資金の過不足を見るということのようですが、難しいですね。
日本銀行が公開していました。https://www.boj.or.jp/statistics/sj/sjexp.pdf
このデータの見方はこういうことのようです。
- 政府部門の資金不足を家計と企業の資金余剰で補っている
家計部門の資金余剰が金融機関を通じて企業に投資資金を提供するものなのに、家計部門では資金が縮減し、企業は内部留保という形でため込み、国債を買うことに使われるという、もはや「資金循環」という名に値しない本末転倒な構図だと言います。
2018年危機
- 日銀の国債保有残高(570兆円)が日本のGDP(560兆円)より大きくなる
世界の危機
イギリスのEU離脱
- 従来型良識的離脱派の考え方が良識
EU的な均一化と画一化から解き放たれ、イギリスらしい開放性と独自展開が出来れば、大陸(EU)とも生産的な関係を築くことができる
EUの混乱
- EUは時代適合性を失っている
より緩やかな統合の中で実質的な結束を目指す、「深化から進化へ」の道しかない - EUは、東西冷戦がこれから始まろうとしている時代に描かれた設計図をもとに「深化」を目指しているが、そのこだわりを捨てて「進化」、つまりこれ以上統合せず、結束を強めることが必要
ユーロの行方
- 基本は消滅
二リーグ制ユーロ、または多数金利性ユーロ
こんな感じでしょうか。
どアホノミクスへの「最後」の通告、などとは言わず、毒もあり、棘もある主張を続けていただきたいと思います。