検察庁法改正に絡む黒川氏の件、怒涛の展開ですね。いったい何が起きているのでしょう?
なぜこのタイミングで? と誰もが思うこの不可解な「黒川賭け麻雀事件」の真相を、まったくの素人が報道されていることだけで推理してみました。
週刊文春5月28日号を読んでみたら…
週刊文春5月28日号を買ってきました(笑)。
「今度の金曜日に、いつもの面子で黒川氏が賭けマージャンをする」こんな情報が、産経新聞関係者から小誌にもたらされたのは四月下旬のことだった。
これ、ちょっとびっくりですね。文春に情報をもたらしたのは「産経新聞関係者」とあります。あの産経です。
記事から経緯を時系列で追ってみますと、
- 4月下旬 産経新聞関係者から文春に情報
- 5月1日 麻雀現場を撮影(黒川氏、産経記者A、B、朝日新聞記者)
- 5月13日 別の産経関係者からこの日も麻雀が行われたとの情報
- 5月17日 本人直撃
- 5月18日 読売が【独自】として検察庁法改正案見送りと報道
夕方、実際に継続審議となる - 5月20日 文春デジタルに黒川氏の賭け麻雀記事がでる
情報の出どころは産経新聞関係者!
産経新聞は「安倍政権の機関紙」とか「御用新聞」などと揶揄されている新聞です。産経新聞関係者というのが内部の人間とは限りませんが、安倍政権の命取りにも成り兼ねないこんな情報が産経から出てくるというのは考えにくいです。
ただ、この検察庁法改正案に関しては、産経の社説をまとめサイトで読む限りですが、安倍政権がやろうとした検察庁法改正を擁護しようとするスタンスは感じられず、その主張はかなり真っ当です。改正案の問題点をきちんと整理し、内閣委員会ではなく法務委員会で議論を尽くせとか、検察は国家公務員であっても準司法機関として特殊であるなどと他の新聞とほぼ同じようなスタンスを取っています。
それにしても、なぜわざわざ産経という実名を上げているのでしょう。産経内部になにか起きたのか、外部の関係者と何かあったのか、こんなことを詮索しても無駄ですが、産経新聞関係者の実名には何かありそうです。
実際、この賭けマージャンが行われていた場所は
産経の社会部に、元検察担当で黒川氏と近く、現在は裁判担当のAという記者がいます。彼が一人で暮らすマンションが集合場所です。
とあり、その場所は産経の記者の自宅らしく、他のメンバーは、黒川氏とA氏の他に別の産経新聞の記者と朝日新聞の記者とのことです。
4月下旬から何かが動き始めている
検察庁法改正案は4月16日に衆議院で審議入りし、4月下旬にはまだ内閣委員会での審議も始まっていないはずです。
その段階からもうすでに何かが、誰かが、動き始めているということになります。
本人直撃まで2週間あまり日をおいている
ただ、文春は、5月1日に現場を押さえて写真まで撮っているのに本人直撃は16日後です。現場は押さえたけれどもスクープとするかどうかに迷いが感じられます。指示待ちなんて陰謀論を言うつもりもありませんが、13日の麻雀については、
さらに取材を続けると、驚くべきことに、卓を囲んだのは五月一日だけではなかった。前出とは別の産経関係者が明かす。
「実は五月十三日の水曜も黒川氏はA記者宅に向かい、…」
と、文春は麻雀現場を取材しておらず二次情報だけです。
つまり、5月1日以降、さらに深く取材しようとはしておらず、このネタをどうするか判断しかねているふうにも見えます。
そしてその間に、10日ごろからネット世論が盛り上がり始め、15日には検察OBが法務省に反対の意見書を提出、そして17日までの週末にかけて、翌週に強行採決されないようにとさらにネット世論が盛り上がっています。
その段階の17日の日曜日、やっとスクープ報道を決断したかのような本人直撃取材です。
もうひとつ不思議なのは、文春は5月10日の文春オンラインで次の記事を掲載しています。
見出しに直撃取材とありますが、今回の直撃取材ではなく黒川氏の定年延長後の2月2日に直撃取材した記事が掲載された2月13日号の再公開で、その時点の内幕的な記事となっています。
すでにこの記事の中にも「犬の散歩以外の黒川氏の趣味は麻雀とカジノ」とあります。
文春は、この5月10日の時点で、5月1日の黒川賭け麻雀のネタを持っていたんですかね。つまり、ネタは持ち込まれたものということはないのでしょうか。
まあどうでもいいことではあります(笑)。
真相を推理してみよう
それにしても政権内部で何かが起きていることは間違いないですね。
単純に文春のスクープの線はありか?
普通に考えれば、文春が情報源からの情報にもとづいて取材し、裏を取り、社内で検討し、発表に至ったという流れが自然でしょう。
そして官邸がその情報を得て、このまま強行に押したら政権が持たないと判断し法案成立の見送りを決定、まずは読売にリークして、どうやら見送るらしいと世間の空気を地ならしし、その後正式発表するという安倍政権がよくやる常套手段を使ったということになります。
黒川氏の麻雀好きは皆知っていたはず
文春自体が2月13日号に書いているように黒川氏の趣味は「犬と麻雀とカジノ」であることは周辺の者なら誰でも知っていることと思われます。
5月28日号の記事でも、黒川氏にも記者たちにもコソコソ感は感じられず、一緒に行動することは避けているようですが、産経が手配したタクシーに記者と同乗して帰るということまでしています。
つまり、文春がスクープを狙って張っていたわけではなく、その気があれば、どこの報道機関であれ、いつでも現場を押さえられたのにどこもそうはしなかっただけで、なぜか今回は決行したとも考えられます。
ですので、そこに陰謀的なものをみるかどうかということになります。
産経新聞関係者は本当にいるのか?
そう考えますと、やはり「産経新聞関係者」というのが気になります。「産経新聞関係者」という人物が存在しない可能性だってありそうです。
黒川氏と記者たちが賭け麻雀をやっているということは周辺の者が皆知っているとするなら、誰が情報源だなどとの詮索など誰もしないでしょうし、ましてや面子に記者二人が入っていたわけですから産経はだんまりを貫くでしょう。
それにしても、話はそれますが、これが官僚や政治家と記者(マスコミ)の日常的な関係ということ自体がなんともやりきれないですね。
読売の【独自】も同じようなことでしょうし、安倍首相と内閣記者会キャップの食事会も似たりよったりで、日本の報道の現状がよく現れています。
事件関係の報道で、捜査過程でありながら容疑者が容疑を認めたとか有罪を前提にしたような記事が出るのもこれでしょう。検察が世論形成のために報道機関を使っているということです。
安倍首相と菅官房長官
で、陰謀論に乗るとしますと、安倍首相と菅官房長官の関係から来る説が一番もっともらしく感じられます。
菅氏が入閣させたと言われている側近の元法務大臣河井克行氏の選挙違反事件、それにIR汚職で逮捕された秋元議員も菅氏に近いとされているようです。
それにここにきて、実は黒川氏をかっていたのは菅官房長官だという話まで流れて、安倍首相は櫻井よしこ氏のネット番組で黒川氏とは会ったこともないと「嘘」を言ったようです。
首相動静を見ればすぐにバレるような嘘をつくのは安倍首相らしいとも言えますが、この流れも安倍首相と黒川氏の関係を絶っておこうとの意志が見え隠れして奇妙といえば奇妙です。
そうしたところから政権内の権力闘争(的)なものをこの黒川氏の賭け麻雀事件にみる向きもあるようです。
権力ってかなり曖昧なもの
ただ、日本の政府権力内に映画にみるような、たとえば「新聞記者」の内閣情報調査室情報官多田のような人物がいて陰謀的なことを仕組んでいるというのは考えにくいです。
権力はもっと曖昧なものだと思います。だからこそ恐ろしんです。言い方を変えれば、時々映画の中の多田のようになる人物がたくさんいるのが権力だということです。
もちろん第一義的な権力者はいます。安倍政権で言えば安倍首相です。
組織は基本的にはピラミッド型ですので、その下に政治家であれ、官僚であれ、たくさんの人間がいます。特に官僚は自らが表立って力を誇示することができませんので権力者に忠信をみせつつ自分の考えを実現しようとします。それが実現すれば、当然権力者は自分の成果として対外的にその力を誇示します。しかし、その政策実現に力を尽くした官僚は表立って評価されることはありません。おそらくちょっと飲んで気が緩めば、あれは自分がやったことだと吹聴したりするんだと思います。
もし権力欲のある政治家がいるとすれば、仮に権力者に仕える身であってもいずれ自分がと虎視眈々と権力者の椅子を狙うこともできます。
しかし官僚にはその道はありません。悶々としつつ、その屈折した感情を、たとえば権力者の威を借りて自分が権力者のように振る舞ったりすることで鬱屈した感情を解消したり、権力者の気に入る進言をして自分が権力者を動かしているとの妄想で自分自身を権力者と一体化させたりして自己顕示欲を満足させようとします。
おそらく権力構造というのは、トップがほどほど〇〇な方が強力になるのではないかと思います。いわゆる「裸の王様」に近い状態です。
権力の実態とはこんなものでしょう。ゆえに「悪の凡庸さ」のようなことが生まれるのだと思います。
現在の安倍政権で言えば、今井尚哉内閣総理大臣秘書官、杉田和博内閣官房副長官、北村滋国家安全保障局長、そしてそれに連なる相当数の官僚たちが、時々、映画の多田のようになるのが安倍政権の権力構造だということです。
で、黒川賭け麻雀事件の真相はどうなのか?
わかりません(笑)。
すみません。結局、誰にも整理できない事情が絡み合って、結果としてこうなってしまったということだと思います。
ただ、結果はそうだとしても、少なくとも脱法的に黒川氏の定年延長を仕掛けた人物、あるいは複数人の意志があったことは間違いありません。
もうすでに、安倍政権の権力構造は、第一義的な権力者である安倍首相が自分は何も知らないと言え、そしてまた、その下に連なる官僚たちも自分は指示に従ったまでだと言える権力の末期的な状態に至っているのだと思います。
安倍政権は最終段階に入っている
安倍晋三の野望は、たとえそれが意味のないことだとしても、あくまでも「憲法改正」です。
黒川氏の検事総長就任にこだわっているわけではありません。種苗法成立も見送りました。残ったのは「国民投票法改正案」です。おそらくこの国会で成立させ、来年9月の任期までに憲法改正の発議を目指すつもりなのでしょう。
たとえこの憲法改正が安倍晋三の幼きころのトラウマから出たことだとしても、現在その周囲にはかなりの賛同者がいるようです。産経はもちろん、読売もそうでしょうし、政治家から経済界、言論界までかなり幅広くその層は広がっています。